昨日、原宿の美容室に行ってきました。
もう10年ほど通っているでしょうか?
明らかに、その美容室の中で私は異質である。
まあ、人間慣れて仕舞えばそんなことは気にならないものだ(笑)
話のメインはそこではない。
本の話である。
本と言っても、ポケットアンソロジーの中の一編です。
ポケットアンソロジーとは、一編が数ページで作られた小冊子を、自分好みでセレクトし、ミニバインダーでまとめて、一冊の短編集としてつくりあげることができる、というもの。
だから、夏目漱石や芥川龍之介や森鴎外など、自分だけのマイベストセレクションを作れるのであります。
今年のゴールデンウィークのときだったかな?
隣町の国立駅の旧駅舎を使った本のイベントがあって、そこで初めてその存在を知って、面白いと思い、バインダーと数冊の小冊子を買ってきていた。
家に帰って早々にバイイングしてみた。
でも、つくって満足してしまい、そのまま本棚へ並べ、読まずじまい。
すっかりその存在を忘れていたら、昨日、原宿の本屋さんでまた出会った。
中島敦の『山月記』
私の中のターニングポイントの一つになっている物語でした。
それが小冊子で並んでいた。
飛びつくように買ってしまった。
そして再読してみました。
何度も読んでいるので、すでに内容は熟知している。
しかし、何度読んでも、この文章の美しさにはうっとりさせられます。
簡潔明瞭に語る出だしの漢文調が最高です。
そして、最も印象的な言葉
「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」
を読む。
この言葉をまたじっくりと味わってしまった。
「自分のやりたいこと探し」が今も世の中で注目されがちですが、その悩みは遠い昔からの永遠のテーマなんでしょうか。
高校一年の時にこの短編を教科書で知り、
「自分はいったいなにをやりたいのだろう?」とか「安定した仕事ではなく、大好きに仕事を見つけて生きていけるのだろうか?」など、
ものすごく自分の生き方について考えてしまった。
その想いや考えを素直に原稿用紙に書いたら、
人生で初めて国語の先生に褒められた。
それで、読書に拍車がかかった。
もし、この短編と出会ってなかったら・・・
と、あの夏の彼方に想いを馳せてしまいます。
若干33歳でこの世を去った作家の値千金な短編です。
ぁあ、また、新潮文庫の夏の100冊とか読みたくなってきたなぁ。(笑)